AgriArt 「パーマカルチャー」ってご存じですか?

◎持続可能な農業を主とした生活環境をデザインする

パーマカルチャーの語源は、パーマネント(Permanent永久の)とアグリカルチャー(Agriculture農業)を合わせた造語です。
それは、農業を主とした持続可能な自給自足的な「生活環境をデザイン」することを意図したことばです。
そして、パーマカルチャーは、農業と動物や住居との関係が生態学的にも健全な循環システムであり、経済的にも成り立つシステムを目指します。
そのためには、昔からの知恵と現代の情報や知識、技術を相互の活かし、自然の恵みを最大限に活かすことの出来るシステムを築き上げようというモノです。

この考えを明らかにしたのは、1928年オーストラリアの南の島、タスマニア州の小さな漁村スタンレー生まれたビル・モリソン(Bill Mollison)です。
モリソンは、自給自足的な伝統を持つ自然豊かなタスマニアが、20世紀後半に開発(破壊)されていくのを目の当たりにして、自然破壊を行わないで生きていくためにはどうすればよいかを1974年、タスマニア大学で教職に就いていた時に、学生(David Holmgren)と共に、パーマカルチャーの実践的な概念を構築しました。

◎パーマカルチャーの構成要素

パーマカルチャーの主な下記の(1)〜(4)の要素を、相互に関係づけて配置・関係性を持たせることによって、相互作用を引き出すというものです。

(1)土地の構成要素(水・土・風景・気候・植物)
(2)エネルギー的構成要素(科学技術・建造物・エネルギー源)
(3)社会的構成要素(公的援助・人々・文化・売買と収支)
(4)抽象的構成要素(時間・データ・倫理)

そして、具体的には、家、倉庫、家畜小屋、畑、池、林、風よけ、道などの環境要素の配置デザインを行います。
農業や牧畜などをやったことがない人には、具体的にイメージするには難しいものですが、基本は自然の力を最大限に発揮するために、持っている環境要素を上手に関連づけて配置デザインするのです。

◎日本独自の「生活環境デザイン」を創造する必要がある

ビル・モリソン氏(オーストラリアのパーマカチャー研究所・所長)は、タスマニアの田舎で広大な土地をパーマカルチャー・デザインによって実践されているとのことです。
実際、日本でパーマカルチャーを全体的に実践するとなると大変な労力と資力が必要です。
食糧、飲料水、電力、家畜の飼える場所、資材等の確保ができる条件の揃った環境が必要だからです。
オーストラリアの面積は、日本の約20倍で、おまけに人口は約1/6です。
人口密度は、1平方キロメートル当たり3人です。
日本国内でパーマカルチャーを実践するためには、整った環境が前提ですから、よほどのお金持ちか一部の人たちに限られます。
日本での実践は断片的なものとならざるを得ないのが現実ではないでしょうか。

しかし、自然の恵みと、要素の相互作用を意図した「生活環境デザイン」は、農業や、漁業、酪農など自然と共に生きようとする者にとっては大いなる方向を示しています。
日本独自の現実に対応した、誰もが可能な新たな「生活環境デザイン」を創造する必要があります。

参考:ビル・モリソン、レニー・ミア・スレイ「パーマカルチャー(農的暮らしの永久デザイン)」田口恒夫・小祝慶子訳、1993、農山漁村文化協会