今年は、新たに田んぼが増えました。
春日大社の南方、奈良公園からは200mほどの場所に、新薬師寺と鏡神社があります。
その新薬師寺・鏡神社の南隣にある1.1反(約330坪)の田んぼです。
写真美術館のそばです。
従来の田んぼと合わせて(全部で約1.8反)米作りを行います。
今年は、主食米のヒノヒカリと、黒米(古代米)そして、少しですが餅米を作ります。
餅米は、12月23日に鏡神社で餅つきを行う予定です。上手く出来れば・・・出来なくても知人の皆さん久々に餅つきに参加してください!(現在、木の臼と杵がひとつ手に入れました。杵がもう一つと、餅米の蒸し器を探しています!皆さんどこかに、ありませんか?もらいに行きます!)
さて、今回は自然農法の苗代づくりについて書きます。
(1)自然農法の米作り
自然農法とは、いろいろな定義がありますが、私のやり方は、田んぼを耕さない「不耕起」、米糠やワラや草など、田んぼに返すモノ以外の肥料をやらない「無施肥」、また除草剤や農薬などは一切やりません。よって「不耕起無施肥無農薬」と言うことになります。
太陽の陽射し、雨風、虫や微生物、草、土、そして昨年収穫した種籾の力など、自然の力を精一杯身方に付け、自然に依存しようとする農法です。意図的に有機肥料を投入し、規定の範囲内での農薬使用を行う、一般で言う「有機農法」とは異なります。
そして、機械が無くとも誰もが出来る金のかからないやり方を貫く方針ですので農作業のほとんどは手作業となります。
ただし、自然農法での田んぼの立地が難しいのです。
自分の田んぼの上段に、慣行農法(農薬、肥料、機械等を使う農法)の田んぼがあると、その農薬や除草剤を含んだ水が入って汚染されるため、田んぼの立地が自然農法にとって大きな課題となります。
幸い我が家の田んぼは、どちらも春日山原始林から流れ出る山水をそのまま引き入れることが出来るので自然農法に適しています。新しい田んぼも、隣接している慣行農の田んぼは下段に位置していますのでラッキーでした。
(2)苗代づくり
「種下ろし」とは、種まきのことです。稲の苗を作る場合も野菜などの種まきも「種下ろし」といいます。
「苗代」とは、移植用のイネの苗を育てる苗床のことを呼ぶ場合に使われます。
昨年は、ミツバチの養蜂作業が忙しくて苗代づくりが4月28日と遅くなってしまい、6月の田植えの頃でも苗の育ちが悪くその結果、田植え後の成長が遅く、雑草との競争に負けた苗が多くなってしまって収穫が少なくなってしまいました。
やはり作物は、苗が大切です。お米以外の野菜も同じです。
しっかりした苗作りが自然農の場合、特に重要であることに気づかされました。
今年は、その反省を元に苗代づくりを4月10日頃に行いました。
また、新たに増えた田んぼもあって苗代づくりは慎重です。
昨年と変わったのは、苗代づくりの時期と、規模とくん炭を使ったことです。
−1)苗代づくりの場所決め
苗代は、種を蒔いた後は水を常に張りますので、水の出し入れが便利な場所が適しています。
大雨が来ても大丈夫な排水口も大切です。
また、土の表面には沢山の植物の種がありますから、苗代の雑草を少なくするために種のある表土を2〜3センチほど削り取ります。ですから土を掘り起こしていない場所を選びます。
苗代の面積の目安は、1反で約30平米です。
種籾は、1反で約6〜7合ほど播きます。
【苗床の事前準備】
※苗代の場所決定は、毎年変える場合があるので稲刈りが済んだ時期に決めておくと良いでしょう。
本来は、事前に決まった時点で場所の草を根元から、ノコギリ鎌などで取り除き、米糠を薄く蒔いて、ワラを飛ばないように被っておきます。こうすると新たな種が苗床用地に落ちないため、春の種下ろしの時期に、作業が−4)から始めることが出来ます。
−2)溝掘り
苗代を作る場所(苗床)が決まれば、まず最初は、苗代を残してその周りに溝を掘ります。
スコップの幅(約25〜30センチ)で、深さは、20センチほどでしょうか。
この溝の目的は、苗代を分かりやすくするために他の場所から独立させます。そして、その溝に水を引いて苗代に浸透させて給水します。
【溝の堀り方】ですが、
まずスコップで、苗代の区画のぐるりをタテに土を切っていきます。
そして、その外側の約25〜30センチ幅も同様にタテに土を切っていきます。
最後に、このタテ切りした溝部分の土をスコップで10センチから15センチほどの幅で小割りにして掘り出します。
また、掘った土は、細かくせずにスコップで掘った塊を土の底部を上にして(ひっくり返して)溝の外側に並べて置きます。この土は後で、(3)−1)の覆土に利用します。
−3)表土はがし
苗床が溝で区切られてはっきりとしました。
しかし、その表土には様々な植物の種が沢山乗っています。このまま種を蒔くことは出来ません。
これを取り除くために苗床の表土はがします。
【表土の除草】
まず、表土をはがす前におおまかにノコギリ鎌で雑草を取り除きます。
土面まで雑草を取り除きます。茎や根が太いモノは、根まで取り除きます。
次に、スコップか平鍬(平たくなった鍬)で表土を2〜3センチ、端から丁寧に取り除きます。
その土はこぼさないように、苗代の外の土の塊を避けて置きます。
苗代が終了下地点で、低くなった苗床部を元の高さに戻す場合には、その土を戻します。
【表土はがしのタイミング】
表土はがしを行う場合、土地が湿りすぎていると土を掘り起こした後の整地が難しいため、乾いた状態の時に行います。
【苗床を水平に整地する】
また、苗床の溝に水を張ったときに苗代全体に水が行き渡るようにするため、苗床を水平に整備します。ある程度水平に表土をはがした後、溝に水を入れて水平かどうかを確認します。
・・・以上で、表土をはがして水平に整地した苗床の準備が出来ました。
−4)苗代床づくり
次に、苗床の土を3〜4センチ掘り起こします。
そして、籾殻で作ったくん炭を混ぜます。くん炭の代わりに腐葉土でもかまいません。(くん炭の作り方は後日掲載します。)
掘り起こした土の1/5〜1/2程の量を入れて土と混ぜます。
これは、保水力を高める働きと、苗を土から引き抜くときに、引き抜きやすい状態を作るためです。
また、この時点で土地が痩せていると判断した場合、米糠を蒔きます。
蒔く量は、薄く全体に米糠が一ヵ所に集まらないようにします。
全体をよく混ぜて、トンボなどを使って全体を平らにならします。
そして、トンボなどで少し叩いてほぐした土を固めます。
以上で、種まきの準備が出来ました。
(3)播種(種籾まき)
今年は、主食米のヒノヒカリと、古代米(黒米)、餅米(ハクトモチ)の種を蒔きました。
【種籾の準備】
種籾は、前日にバケツに水を張ってその中に漬けます。かき混ぜながら籾が沈むのを確認します。
そして、沈まない籾やゴミを取り除きます。
残った種籾をザルで取って、水切りを行い陰干ししておきます。
【種籾まき】
種籾は、種同士が3センチほどの間隔で蒔いていきます。
最初は、適当にばらまいて、後でひとつずつ調整する方法と、間隔を見ながら蒔く方法など、いろいろ自分に合った蒔き方を試してください。
−1)播種のあとの覆土
種籾をまいた後は、その上に土をかけて被います(覆土)。
被う土の厚さは、籾の厚みです。約2〜3ミリが目安です。
【溝掘り土の利用】
・・・(2)−2)の溝掘りの時に、土の塊をひっくり返して溝の外側に並べて置きました。
その種が少ないであろうひっくり返した土をノコギリ鎌で切るように取り、「てみ」や「バケツ」などに溜めておき、そして、土の塊を両手で拝むようにしてこすりながら土をこまかくして種籾の上に振りかけます。
土の塊が堅く乾き過ぎても、柔らかく湿りすぎても上手くいきません。
細かくばらけるには適度な湿気がある土の塊の状態が適しています。
【覆土を固める】
覆土作業を終えた後は、雨や風などで種籾が移動しないように苗床表面をトンボなどで全体を押さえておきます。
以上で、苗代が完成です。
−2)野鳥や日照りから苗代を守る
しかし、苗代の種を鳥が狙ってきます。そして、土の乾燥を防ぐために草を乗せます。
カラスノエンドウなどの柔らかい草がむいています。
また、鳥の羽が当たるように細い竹や木の枝などで被います。
今回は、草で被った上を安い鳥よけ網を乗せました。
−3)溝に水を張る
苗代づくりの最後に、溝に水を張って苗代に給水します。
水位は、苗代表面ギリギリが理想ですが、少し下でも浸透して土が充分ぬれれば問題ありません。
(4)苗代の管理
苗の成長には、約2ヶ月必要です。その間、良い苗づくりのために苗代の管理は大切な作業です。
−1)水の管理
出来るだけ水を切らさないように給排水の管理を行います。
−2)苗代の除草作業
苗床の状態によって、草が生えてくる割合は様々です。
3週間ほど経った後、週に1度の割で兎に角こまめに雑草を根元から除草します。
苗が大きくなると雑草も大きく根を張ってきます。根を抜くと稲の苗にも影響する場合、ハサミで雑草を切り取り除草します。
(5)苗の完成判断
一般の慣行農の苗は、三枚の葉(三葉)が出そろった頃が田植え開始の目安ですが、
自然農の苗は、五枚の葉(五葉)が出そろった頃が田植え時です。
五葉の苗は、20センチを超える長さも珍しくありません。
大きな苗は、少し草が生えている田に植えた場合、苗の成長が他の草よりも先行するために管理がし易くなります。
良い苗は、見た目で分かります。根元が太くてしっかり根を張った苗です。
苗が育ったら、いよいよ田植えです。
※主食米のヒノヒカリを今年は、約1.3反に増えたのに23平米しか苗代を作っていなかった!? いつもは苗床が狭くとも、充分苗の数があったのでまかなえたのですが、今年は苗の数が少なく(発芽率が悪い)なってしまいました。・・・こういう事もあります。
つづく