お米作りの種下ろしの方法で、「ポット苗づくり」を行うための参考になればと、そのプロセスをご紹介いたします。
2014年の「種下ろし」(お米の種まき)をおこないました。
ミツバチの世話や、畑の種まき、イベントなどなどの隙間をぬって行いました。
奈良公園周辺の種下ろしの季節は、慣行農(一般的な農業)で自前で田植機用の苗の栽培を行っている農家では、例年4月10日頃です。
しかし、慣行農用の苗作りも手間のかかると思われるようで、ほとんどの農家は、農協などからトレーに入った苗を買われているようで、あまり苗代をつくって種下ろしをしている風景も見なくなりました。
我が家がやっている自然農は、自然に依存した不耕起無施肥無農薬の米作りです。
昨年までは、田んぼの端に苗代をつくって種まきして、苗をつくるやり方でしたが、今年は、「ポット苗づくり」に挑戦です。
128ヶのポットトレーを購入して、1つずつ土を入れて、1つずつお米の種を蒔いていく方法です。手間がかかります。
田んぼに直に苗代をつくる場合と比較してのメリットとデメリットを考えると、ポットトレーの方は、一度に済ませなくても良いので作業時間が分散できるメリットが我が家では一番の理由です。
ポットトレーでは以前に一度、小さな田んぼの分を行ったことがあります。問題なくできました。
今回は、さらに手順など幾つかの改良を加えて行いました。
準備作業など手間はかかりますが、天候や他の用事などの合間を縫って作業できるので都合が良いのです。
まずは、実行あるのみ!
(1)苗土の確保(3月初旬)
ポットに種を植えるためには土が必要です。
そのために田んぼの土を使います。
あまり使っていなくて、掘り起こしていない田んぼの土を使います。
まず、植物の種がいっぱい落ちている表土を3㎝ほどはがしてから、その下の土をシートの上に広げていきます。大体ですが約300キロをめどに。
乾燥させて土を細かくする必要があります。天候を見ながらの農作業です。
数日間乾かして、細かく砕いて、また全体を乾かしていきます。
何度か繰り返します。
空きが4.5ミリの金網で土振るい器をつくりました。
これで、ポットに入れる程度の細かな土を選別します。
乾燥させた土をタタキながら細かくしつつ、土振るい器で選別する作業をおこないます。
選別した土は、雨の当たらないシートの上に広げておきます。
湿度が高いまま密閉容器や、シートで覆うとカビが生えてきますので注意が必要です。時々、乾燥させるためにかき混ぜてやります。
(2)腐葉土の確保(3月初旬)
昨年の夏に、草木を破砕した腐葉土資材をもらってきて、田んぼの端に10ヶ月近く放置しておきました。その腐葉土資材を土振るい器にかけて、細かな腐葉土を選別します。
この腐葉土は、ポット苗に混ぜると同時に、ポットの底の穴を塞ぐために使います。土振るい器に掛けた田んぼの土だけだと、ポットの底の穴から落ちてしまうからです。実際やってみると上手くいきました。
(3)作付け計画
種下ろしするためには、種籾が必要です。
作付けする場所は、4つの田んぼに分かれた、2反弱の田んぼ面積です。
作付けするのは、主食米の「ヒノヒカリ」「黒米(古代米)」「赤米(古代米)」「餅米」の4種類です。
田んぼの広さを測りました。
我が家の田植えの苗の間隔は、40センチ幅、30センチ間隔に1本の苗を植えています。田んぼ毎に、昨年の切り株後を数えていきます。
1本苗植えですから株数が、苗数です。即ち、最低必要な籾種の数です。
ポットトレーは一枚で、128ポットあります。
出来の悪いモノなどを15%ほどと加味して、株数=籾数=ポットトレー数を決めます。
ポットトレーを必要数購入する場合、事前にこの計測作業が必要です。
( )内は、実質必要数。生産数は、それに15%ほどと加味。
▼ヒノヒカリ=64トレー=(3700+3500)=7200×1.15=8280/128=64トレー
▽上の丸田=33トレー=4255(3700)
▽下の水田=31トレー=4025(3500)
▼黒米=下黒米田=14トレー=1782(1550)
▼赤米=下赤米田=14トレー=1782(1550)
▼モチ米=上餅米田=9トレー=1150(1000)
で、合計トレー数は、64+14+14+9=101トレー
合計株数は、101×128=12928株
実際は、土とトレーが余ったので、14,000ポット(110トレー)程度つくりました。
(4)種籾の準備
種籾は、塩水選別を行います。
発芽する歩留まりを高めるためです。
昨年までは、バケツに水を入れて、沈んだモノを蒔いていましたが、今年は、塩水に選別で、よりシビアに種を選別しました。
塩水選に使う比重液は、
▼ヒノヒカリ(うるち米)は、水5リットルに塩1.25Kgを溶かして塩水を作り、比重を1.13にします。
▼モチ米は、水5リットルに塩0.75Kgを溶かして塩水を作り、比重を1.08にします。
塩水の中に種籾を入れて底に沈んだ中身の充実した種籾を使います。
より充実した籾を選別したい場合、余分に塩を入れ比重をより重くします。
塩水選が終わったら真水できれいに洗います。
▼黒米、赤米なども、モチ米程度の塩水をつくって、沈むお米の量を見ながら、塩を加減しながら適度な比重を探ります。浮くお米が多い場合は、水を多く入れて調節します。
塩水選別の後に、60℃のお湯に5分種籾を入れて湯温消毒を行い、すぐに冷水に入れてそのまま水に浸けておきます。その場合、毎日水を換えます。
発芽が促進されます。
一般に芽が出るのにかかる時間は水の温度と日数を掛けた値(積算時間)が100℃といわれています。
今回は、ヒノヒカリ以外は、湯温消毒を行わずに水に浸けました。
土の準備などが間に合わない場合や、忙しくて種下ろし作業が遅れそうな場合、種籾を水に浸けておきます。水に浸した時点で種下ろしをしたことになるので、その間に種下ろしの他の準備を整えて、種まきすれば時間調節が出来ます。
水に浸けた籾は、種を植える数時間前に自ら出して、陰干しして乾燥させます。
水を切る方が種籾は扱いがよいのです。
(5)ポット・トレー置き場(苗代)の整備
ポット・トレーに種まきした後、トレーを水平に並べて置く場所が必要です。
水は、トレーの底が少し浸る程度に水平を調節します。
トレーの数とその面積、並べ方によって、スペースを決めます。
水に浸す必要があるので、なるべく水の管理が容易な場所、移送がたやすい場所などが便利です。
トレー置き場が出来ると、水を浸してみて確認しなが水平を調節します。
そして、シートや農業用マルチを下に引きます。
シートを敷く理由は、苗が成長すると根っこがポットの下から出ます。土の上に直接置くと後で切断することになり、苗を痛め、作業も増えるため事前にシートを敷くのです。
(6)ポット・トレーの種まき
まず、ポットの底の穴がふさがる程度に腐葉土を入れます。
そして、振るいに掛けた田んぼの土を入れます。トレーを叩くと土は平らに納まるので、そこで種籾を一粒ずつまきます。関西のたこ焼きの具を入れる要領です!?
そして、割り箸のような竹串で種を押さえて埋めます。
最後に、土をまいて調節します。まさに・・・たこ焼きの要領です!?
種まきしたトレーは、順番にトレー置き場に並べていきます。
作業は、数日に分けても構いません。
それが、ポット・トレーの種まきの利点です。
作業途中に雨が降る可能性がある場合のために、寒冷紗などをかぶせておきます。
寒冷紗は、直接雨がポットの土に当たらないようにするためです。
強い雨のばあい、土が飛び散る場合があるからです。
また、寒冷紗をしない場合や、鳥害の可能性がある場合は、鳥よけ網を張ります。
種下ろしの時期は、一般に4月頃と言われますが、自然農法の考え方では、時期は早ければ問題ない。遅い方が問題となります。
田んぼに落ちていた籾が自然(実生)に芽生えて、大きな株をつくることが良くあります。植えていないところに出来ますから、実生と分かります。
大地に残る種は、通常の天気にさらされても発芽には問題ありません。
自然の天候、その場の環境に応じて発芽し根付く苗こそが理想です。
少し早く種下ろしをして、「自然の波」を待つことが間違いないと信じています。
以上、種下ろしまでの手順です。
苗が出来たときに、生育状況や問題点などをご紹介いたします。
※ちなみに、我が家の苗代の場所は、奈良市高畑町の新薬師寺・鏡神社の前にある田んぼです。