ミツバチの群れ「コロニー」が、ひとつの生命体であった
(1)ミツバチのコロニー
私が、昆虫のなかでミツバチに惹かれる最も大きな点は、「群れ」がひとつの生命体「コロニー」という単位になっていると言うことです。
人間を含め、ほとんどの生物はひとつの個体(単体)が生命として成っています。そして、単体または雌雄によって子孫をつくり、分裂、増殖しながら生き残りを行っています。
ところがミツバチの場合、そのコロニーの分裂、増殖によって種の生き残りを行っているのです。群れであるコロニーが、一匹の動物のように生存しているのです。
※写真は、春にニホンミツバチが分蜂(コロニーの分割増殖)したときに、作っておいた止まり木に集まった様子です。新たな巣に移動する前に、このように一度集まって待機する習性があります。働き蜂が女王蜂を中心に集まってコロニーとなっています。
ちなみに、この分蜂時の蜂の塊に、人差し指を差し入れてみました。手袋はしていません。そうすると中は暖かいんです。分蜂時の蜂は、お腹に一杯ハチミツを詰めて出てきます。蜂は、おとなしく刺しません。
(2)ミツバチのカースト
日本での養蜂の対象となっているセイヨウミツバチとニホンミツバチの二種のコロニーは、一匹の女王蜂を中心として雄バチと多くの雌バチ(働き蜂)によって構成されています。
役割の違うこの構成をミツバチの「カースト」と呼んでいます。
女王蜂はコロニーの中では最も大きく産卵が主な仕事です。女王蜂は、コロニー独自のフェロモンを分泌して、コロニーの識別を可能にして集団の行動の求心力を持っています。
雄バチは、女王蜂が生まれる頃に合わせて、働き蜂が産んだ無精卵から生まれます。雄バチは、女王蜂と交尾する役割のために生まれます。コロニーでは働かずに働き蜂から餌をもらって、役割が終わると死にます。
働き蜂は、コロニーを維持するための仕事を担っています。
巣の中仕事としては、巣作り、幼虫の世話としての餌やり、餌運び、餌の蜜や花粉の受け渡し保管作業、巣内の掃除、巣の警備などです。
巣の外では、花蜜の採蜜、花粉採集が主な仕事です。
このように、ミツバチのカーストによりコロニーが秩序をもって維持されているのです。
※写真は、2011年12月31日のある飼育しているニホンミツバチ巣箱内の状況です。寒い冬を越すために女王蜂を中心に固まっていました。
(3)女王蜂がいなくなったミツバチ
通常、女王蜂がいなくなると、コロニー自体が維持できなくなります。
ニホンミツバチの場合、女王蜂がいなくなると新たに女王蜂を幼虫から育てることが不可能なので、群れ全体が消滅するか他の群れに吸収されてしまいます。
しかし、セイヨウミツバチの場合は、働き蜂が新たに女王蜂を幼虫から飼育生成する場合があります。女王蜂がいなくなった時点で、幼虫が存在しており、その幼虫に働き蜂がローヤルゼリーを与えて、新たに女王蜂を作るというものです。この原理からセイヨウミツバチは、人工的にコロニーを沢山増やすことが出来ます。
しかし、幼虫が存在しない状況での女王蜂の不在は、コロニーの死を意味することになります。